Vol.1 『お家へ帰ろっ』

ケン先生からとっても大切なあなたへの贈りもの

最近はクラスの最後に「お家へ帰ろう」というテーマのラップの曲をかけています。故郷や両親、家族、あるいは身近な人々に対する価値観を再認識してもらおうというのが目的です。あなたはここで生まれて、ここで育って、ここがお家なんだよということをもうー度思い出し、感覚的にハッピーになり、心穏やかになってほしいと思うのです。

いま、日本人はどんどん孤立しています。自殺をする人や鬱になる人が多くなっているのも、生きる喜びを見いだせないからでしょう。ヨガをやっている人も、ヨガの練習をしないとハッピーになれないというのは、本当の幸せではないのでしょうか。ヨガを深く極めようとして、実生活との接点が見えなくなって、本人が生きる喜びを見失ったまま時間が過ぎていくことになってしまうことがよくあります。ヨガの練習をしたからハッピーになるというのではなく、ヨガの練習をする前にハッピーな自分がいる。つまり、最初にヨガありきではなく、ヨガは後からついてくるのです。ハッピーに生きるのにやっていたのが実はヨガだった、というほうが幸せな生き方なのです。

私がものを考えるときの基本コンセプトは、「何でもいい」ということです。ひとつの考え方にこだわるのではなく、あれもある、これもあるというふうに考えるのです。こうしないといけない、それ以外の方法はないと思い込むと、死なざるをえないくらい追い詰められてしまう場合があります。そうではなく、まだまだ可能性があって、諦めなくてもいいと思えれば、生きる望みにつながります。「何でもいい」というのは、どうでもいいと諦めることではなく、可能性や選択肢があってまだ生きていけるという余白を残すことです。ヨガをやっていても行き詰まっている人はいます。ヨガをやると行き詰まらないというのではなくて、行き詰まらない考え方や生き方をしている人は、ヨガをやっているというほうが理にかなっています。

日本人は自分の想いをあまりストレートに表現することが得意ではありません。それにあまりハグする習慣もありません。でも、子供はお母さんに抱かれていると、ものすごい安心感を得ます。実はみんな、ギューッと優しくハグされる感覚を求めています。ですから、実際にはハグされなくても、ハグしてもいいですよという素直な気持ちを伝えることが大切です。人間関係が希薄になっている時代だからこそ、人間臭い部分をストレートに表現したほうがいいのではないでしょうか。見守ってくれる存在が自分の身近なところにいたら、ずいぶん気持ちが楽になり、生きやすくなります。愛する人とつながっているという感覚を持っていれば、たとえ先立たれてもその人は自分の心の中に感謝の念とともに残ります。そうした感覚はヨガを通して養っていけばいいのです。

もし家族と過ごすという価値観を忘れている人がいたら、まずそれを見直してみましょう。ときには週末のヨガワーショップを休んで両親に会いに行ってもいい。わざわざ遠いヨーロッパに花を見に行くことを考えるのだったら、お家から駅までの間に咲いている花を愛でるほうがよほど幸せではないでしょうか。幸せは目の前にあるのです。読者のみなさんも、愛する人、愛しい人、敬愛する人に、感謝の気持ちを込めて「ありがとう」というメッセージを、今すぐに伝えてみましょう。

もし帰るべきお家や頼るべき人がいなくても大丈夫。私の心の中にみんなのお家があるからね。

心より愛を込めて。
ケン

ヨガジャーナル日本版 Vol.5 (INFOREST MOOK)日本を代表するヨガ指導者であるケン・ハラクマ先生が、すべてのヨギ& ヨギーニに贈る、心温まる言葉のギフト。

ヨガジャーナル日本版 Vol.5 p.17より

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