Vol.2 『過去があって今がある』

ケン先生からとっても大切なあなたへの贈りもの

過去は忘れましょうとか、過去にとらわれずに今この瞬間を生きることに価値がある、というような風潮があります。でも、過去を忘れると先ばかりを見てしまい、ほんとうに必要なものがすぐそばにあることすら忘れてしまいます。

みなさんは、20年、30年と生きてきたなかで、今この瞬間の感覚や感情はすべて過去のメモリーの集大成であり、思い出をないがしろにしてしまうと今この瞬間を味わえない、ということに気づいているでしょうか。この瞬間はすぐに次の瞬間に移り、過去として積み重なっていきます。今を生きるということは、その積み重ねによって前進することです。

未来のことは、心配事でも予定でも、せいぜいひとつかふたつ持っていれば十分です。それよりも、これまでの過去の経験のほうが断然大きいのです。たとえば自分にとってすごく気持ちのいい思い出を、時空を超えて、今この瞬間に蘇らせてみましょう。そうするとその思い出に対して、感謝の気持ちを持つことができるのではないでしょうか。つまり、今この瞬間に感謝の気持ちを味わうのです。

過去のメモリーは、今を生きるための大切な材料といえるでしょう。たとえそれが嫌なこと、悲しいこと、苦しいことであったとしても、それを忘れるのではなく、あえて受け入れて蘇らせる。むずかしいことかもしれませんが、これは考え方の問題なのです。今の自分は過去のさまざまな経験があってこそ、成り立っていることを知りましょう。

私たちのメモリーには、思い出の音楽があり、写真があり、手紙があり、いろんなものがつまっています。そういったさまざまなメモリーを使って生きる喜びを感じ、味わってみましょう。メモリーを味わうのは現実逃避ではありません。自分は過去の積み重ねによって生かされているのですから。そのことを感じながら、アーサナの練習、呼吸の練習、瞑想をすれば、過去にとらわれてしまうことはないのです。

過去に感謝することは、将来の夢へとつながります。もしあなたが悲しい思い出から抜け出せずにいたら、その思い出を感謝の気持ちをもって受け入れてみましょう。そうすれば、外の世界や遠い未来ばかりに意識を向けずに今を幸せに生きることができるはずです。

今つらかったり、悩んでいたりしている人もいるでしょう。そういうときには、たとえばだれかが言ってくれた「がんばれ!」という言葉を蘇らせてみてください。そして、その言葉がどんなにあなたのになるかを感じましょう。これまでの人生のなかで、今の自分を励ましてくれる言葉はたくさんデータとして、あなたのなかに残っているのですから。

でも、もしそんな言葉が見つからなくても大丈夫。私がいつでも大切なあなた応援していますからね!

心より愛を込めて。
ケン

ヨガジャーナル日本版 Vol.6 (INFOREST MOOK)日本を代表するヨガ指導者であるケン・ハラクマ先生が、すべてのヨギ& ヨギーニに贈る、心温まる言葉のギフト。

ヨガジャーナル日本版 Vol.6 p.21より

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