Vol.4 特別編 『シヴァ神と読者のみなさんにこの一年の感謝の気持ちを込めて』

ケン先生からとっても大切なあなたへの贈りもの

みなさんもシヴァという名前は開いたことがありますね。ヴィシュヌ神とともにインドの2大神として崇められている神様です。シヴァ神は、人間の意識が創り上げたエネルギーの象徴であり、全宇宙の破壊と創造を司る神様とされます。すべてのものは消え、そして再生するという自然界の永遠のサイクルを表現しています。

北の大地のシヴァ神

今回、北海道のニセコで羊蹄山を背景にして、踊るシヴァ神(ナタラージヤ)と瞑想するシヴァ神に扮して撮影しましたが、自分がシヴァ神になりきるというのではなく、シヴァ神というエネルギーの象徴と自由につながるという意識や、ひとつの形としてシヴァ神に近づくことで感謝の気持ちを表現できればと思ったのです。

瞑想するシヴァは、動いている字宙を静かに見ている。一方、踊るシヴァは字宙そのものを表している。つまり、内と外のエネルギーの合体を2 つの対照的な動きで表現できればおもしろいんじゃないかなと。

シヴァ神というアイデアは、ニセコでのリトリートの10日ほど前に思いついたんです。よくあることですが、アイデアとかひらめきとか、自分が進んでいく道というのは、その対象に照準を合わせると、その方向へ自然に向かっていくことが多いですね。あまり探く考えたり、思い込んだりせずに、ひとつの方向性に対して意識の照準を合わせると、周囲の人たちもそれに同調して複数の人間の思いが一緒になって同じ方向に進んでいく。つまり、その思いというエネルギーの流れや動きが最後まで意識されると、結果として物事はうまく運んでいきます。アルケミスト=錬金術師という言葉があります。広義では、物事をより完全な形に変えていくことです(心も含めて)。これもエネルギーの変換であって、その仕組みがわかってくると、自分の生き方や考え方、外部と自分との関わり方も自然と感じとれるようになります。

ヨガで方向性を保つ

思いを実現するというのは、外的な変化に対してどう対応するかということでもあります。たとえば、この撮影では、予報に反して好天でしたか、天気が悪くても、それはそれで構わないというふうに思ったほうがいいわけです。思ったようにいかないことはもちろんありますよね。たとえぱ、自然災害は人間の意思と直接は関係ないわけです。そういうものをすべて受け入れる意識によってどんな物事に対しても楽に対応できるのです。

つまり、あるアイデアを創造していく部分と、自然の摂理などを受け入れる部分が合体されると物事はいい方向に進んでいくのです。自分の思いだけが強すぎると、まわりのエネルギーとのぶつかり合いが生じます。自分の思いがまわりのエネルギーと調和したときが「思いどおりになる」のです。思いをやわらかく保ちながら、まわりと衝突することなく進めば、思いが現実になっていくのです。

ヨガのポーズや呼吸によって思いのエネルギーレベルが上がると、思いが実現しやすくなりますね。たとえば、アーサナの練習で呼吸とバンダを利用すると、体の中に生成されるエネルギー、つまりプラーナ(生命エネルギー)が活発になり、思いに対してエネルギーを使うことが容易になっていきます。

もうひとつ、その意識の感覚が途中で切れないことが大事ですね。事態が好ましくない方向に進んでいるのに、それが意識されていないと、修正に大変な苦労をします。その修正までの時間が短ければ、方向性自体はぶれないわけです。

たとえばバランスのポーズから、進んでいる方向がずれていないかを感じとることができるようになります。そういうことをポーズから学ぶこともできるようになるのです。

社会の変化に対応

強烈なエネルギーは言うまでもなく、その変化の大きさ、アップ&ダウン、陰と陽といった二面性が、シヴァ神の中にはたくさんあります。シヴァ神と人気を二分するヴィシュヌ神はどちらかと言えば、ゆったりと雄大で慈悲深い存在ですね。ひと休みか何千年という悠長な話ですから、シヴァ神とはまた違ったエネルギーとして表現されています。私たちが生きている時間軸、つまり一日で太陽が出て沈み、毎日毎日が変化していくことを考えると、活動的で変化が著しいシヴァ神のほうがより実用的かもしれませんね。そのために、現代社会に生きる私たちにとっては、ヴィシュヌよりはシヴァに共感できる部分が多いのではないでしょうか。

一方、シヴァ神の行動パターンには、怒りや暴力的な行為も多く見られます。しかし、それは彼自身ではなく、彼のイメージを通して人間の本性みたいなものを伝えているのだと理解できれば、シヴァが暴力的だから自分も同じ行動に出るということにはならないわけです。シヴァ神の存在によって、そのエネルギーをどう変換していくかを自分なりに方向づけていくことを学べるわけです。ヨガの練習によって、シヴァ神が象徴しでいるパワーやエネルギーを養うと同時に、平和な心、感謝の気持ち、優しさ、思いやり、受け入れることなどを意識づけながら、社会や環境の変化にうまく対応して楽しく生きていけばいいのではないでしょうか。

どこにでもシヴァ神

言い換えれば、シヴァ神が象徴するエネルギーは、万物に存在しています。それは石だったり、雲だったり、動物だったり、あるいは人間であったり、いろんな形に変わっても、同質のエネルギーが存在しています。どこ見てもシヴァ。シヴァだらけ(笑)。

人間が神様と崇めているシンボルは世界中に数え切れないほどありますが、実は人間が持っている普遍的な意識には多くの共通点があります。ブッダでも、天照大神、帝釈天でもいいわけです。そうするとシヴァ神じゃなけれぱいけないということもないし、ある神様だけを信じる生き方を否定することもないのです。その両方を受け入れられるというか、すべてにオープンでいられることがより楽でとてもハッピーですね。私の場合は、ヨガを通じてシヴァ神がとても身近な存在として自分の生き方に役立っているのです。

今年から始めたヨガ道も、意識の広かりによっていろんな物事を肯定的に取り込んでいこうというのが基本になっています。中国の武道やハワイのフラなど、自分がそうしたいろんな形のものと融合できれば、意識がさらに広がり、人生をよりリッチに味わうことができるのです。

今年ももう終わりですね。最後に、親、兄弟姉妹、友達、先生、同僚など、自分のまわりの人たち、できればすべてのものに感謝の気持ちを捧げましょう。

私もみなさんに感謝の気持ちを捧げます。そして、来年がよい年でありますように。

心より愛を込めて
ケン

ヨガジャーナル日本版 Vol.8 (INFOREST MOOK)ケン先生、北の大地でシヴァ神になる!? インドを代表する神であるシヴァは、永遠に続く破壊と創造のサイクルを舞っているという。

ヨガジャーナル日本版 Vol.8 p.20-23より

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